記事6のタイトルに関して長めのタイトルサンプルです。
投資家が取得する優先株式とは、要するに創業者が持つ普通株式よりも優先取扱いされる、普通株式とは「内容の異なる株式」ですので、上記の種類株式の

投稿者 著者名 | 2021年 1月 18日
投資家が取得する優先株式とは、要するに創業者が持つ普通株式よりも優先取扱いされる、普通株式とは「内容の異なる株式」ですので、上記の種類株式の規定を用いて、優先株式の内容を決めていくことになります。
優先株式については、複雑な議論も多く、語れば尽きないところではありますが、このサイトは起業家の皆さんにベンチャーファイナンスの要諦を知ってもらうためのサイトですので、起業家の皆さんが知っておくべき重要な点を説明していきます。
まず、なぜベンチャーファイナンスで優先株式を使用するのかについてご説明します。
日本では、かつて、ベンチャーファイナンスにも優先株式はあまり使用されていませんでした。これは、当時の優先株式のルールが厳格で使い勝手が悪かったことが原因とされています。平成17年に会社法が制定され、優先株式の使い勝手の悪さという問題は大きく解消されたことから、現在では広くベンチャーファイナンスに優先株式が利用されています。
ベンチャーファイナンスに優先株式を利用する理由はいくつかありますが、管理人が重要だと思う順にこれを説明します。
「創業者利益発生のメカニズム」では、ベンチャー企業の企業価値の増え方を風船に、株式価値をパイのスライスに例えてご説明しました。そこでは、すべての種類の株式が同じ価値であることを前提にご説明していました。 実際、株式がめでたく公開されると、すべての優先株式が強制的に転換されて普通株式になるように優先株式を設計しますので*、株式が流動性を持ったときのことを考えると、潜在的には「すべての種類の株式が同じ価値」と考えることは間違っていません。
けれども、強制転換がされる前はどうでしょうか。
優先株式には、上記②にあるとおり、残余財産の優先分配の条項が定められており、この条項は、ベンチャーファイナンスのもう一つのエグジットであるM&Aの場合にも、残余財産の優先分配条項に従った優先権で、企業価値を株主間で分け合うこととしています。
つまり、ベンチャーファイナンスでは、株式の価値は以下のとおり条件によって2通りの計算で算出されるということになります。 (a) IPOまでたどり着いた場合 すべての株式は同一の価値となり、(一株当たり価値)=(時価総額)÷(総株式数)となる。 (b) IPOまでたどり着かなかった場合 優先株式と普通株式ではパイのスライスの大きさが異なり、その大きさは、それぞれ、企業価値を残余財産の優先分配条項に従って分配した場合の優先株主の取り分と普通株主の取り分となる。
このように株式が条件によって異なる価値になることに奇妙さを覚えるかもしれませんが、そのようなことはデリバティブの世界では日常茶飯事です。普通株主である創業者と優先株主である投資家は、企業価値が現金化したときの取り分をめぐってデリバティブ取引を行っているのだと管理人は大括りに理解しています。
このデリバティブ取引の勝ち負けは、現金化時点の企業価値と残余財産の優先分配条項がどのように作りつけられているかによって決まることになるかと思いますが、少なくとも初期の段階では優先株主に対する分配が多いはずです。
実例で考えてみましょう。会社設立の際、創業者が普通株式を1株10円で10,000株取得したとします。その後投資家がA種優先株式を1株100円で5,000株取得したとします。このA種優先株式には、残余財産分配請求権として、普通株主に先立って1株あたり200円が分配され、更に残額につき普通株式と同様に分配を受けられることになっていたとします。この時のポストマネー・バリュエーション(投資後の会社の価値)は、投資家が1株100円で購入していますので、
100円 ×(10,000株+5000株)= 1,500,000円
となります。ここですべての株式が普通株式だったと仮定した場合、1株あたりの価格は投資家の取得価格100円ですが、上記の優先分配条項に従えば、
投資家にはまず200円×5,000株=1,000,000円が分配され、
残り500,000円を投資家と創業者でパリパスで分けますので、
投資家には500,000円 ÷(10,000株+5,000株)× 5,000株 ≒ 16,7000円
創業者には333,000円が分配され、結局、
創業者:333,000円(1株あたり33円)
投資家:1,167,000円(1株あたり233円)
ということになります。
投資家の投資が普通株式だった場合に比べて創業者株式の潜在的な価値が抑えられていることが分かります。このような条件であることによって、投資家は当初の創業者株式の取得価格を安くしたファイナンスストラクチャーを許容することができていると考えられます。
Copyright (c) HMメディアラボ all rights reserved.